さようなら 原発事故後の福島のパラレルワールドでアンドロイドはどんな夢を見たのか? 深田晃司監督作品
ここ数年、、いろいろくたびれているのか、大好きなお風呂にかける時間も、観る映画の種類も随分昔とは変わってしまいました。特に、映画に関しては、昔は観る前から展開も結末も読めてしまう娯楽大作には関心がなく、作り手の信念が貫かれたような、いわゆるB級作品や終末モノが大好きでした。 そのせいもあって、デビッドボウイがテーマソングを担当し、核爆弾投下の報を受けたイギリス老夫婦の終末を描く風が吹くときや、西ドイツの放射性物質の漏洩事故を背景に14歳の少女が避難する中で幼い弟を失い、自らも被爆していく見えない雲など原発事故や核を扱った映画などを子供の頃から多少観ていました。
![]() 風が吹くとき [ レーモンド・ブリッグズ ] |
それらで描かれるのは、起きている事実やそれに基づくリスクを秘匿し、末端の住民を切り捨てる政府と、政府がそう言っているのだからと、、お上の声を盲信する誠実な住民の悲しい行く末でした。 私自身、2011年に自宅から数十キロ先の福島第一原子力発電所が爆発した際に、政府、東電、そしてメディアがこぞって、福島の原発で爆発など起きてはいない、メルトダウンなんか映画の世界の話で起こるはずがない、危険はありません、安全です、、と繰り返し繰り返し強弁するのを目の当たりにして、、現実は映画よりも酷いものだと呆れたものです。 事故から5年が過ぎてようやく、国や東電はメルトダウンが起きていることを最初から把握していたことを明らかにしました。 当地の住民は、知識を持ち自分で政府や東電が明らかに嘘をついていることを知り得るグループと、ただただ、国もテレビもああいっているんだからと自ら判断することを放棄するグループ。あるいは、経済的、社会的に避難が可能なグループと、危険を承知でも経済的、社会的事情により避難が困難なグループの二つに分かれました。 危ないと思ったら、逃げればいいじゃないか?? 日本中の、特に西日本の方は遠くからテレビで福島の状況をみて、なんで皆逃げないんだろう、??そう思った方も多かったのではないかと思います。
私自身、別件で部落問題や人種差別問題などを巡って、それなら、そんな閉鎖的な地域から出て違う世界で生活を始めればいいんじゃないか?と思っていたものでした。 しかし、福島の原発事故を経て、それが容易ではないことをつくづく思い知りました。 そんな、こんなで、久しぶりに観てみた映画、、少しわけわからんもの観てみようと思い、ロボット工学の第一人者である大阪大学教授・ATR石黒浩特別研究所客員所長と平田オリザ氏のコラボレーションによる、異色のアンドロイドと人間の舞台共演を目指したロボット演劇プロジェクトを原作として映画化した”さようなら”を観てみることに、、、。 アンドロイドと役者さんが映画で共演するって、どんなだろ、、という興味で観始めたのですが、なんとまあ、作品舞台は原発事故後、放射能汚染に苛まれ順次国外への移民政策が進められている近未来の日本!! 福島に暮らすものとしては、あまりにリアルすぎる設定。 そして、一人暮らしだから、低所得だから、外国人だから、前科があるから、、とそれぞれの理由で避難を諦める人たち。 一方、その苦境を好機にして未来を紡ぐ若者達、、様々な群像が描かれた作品でした。 生きるって何? 原発事故が起きて、もうダメかもとなんども諦めかけながら、様々な苦境や汚染を飲み込みながらもここで生きることを選んだ福島の住民としては、いろいろと思うところある作品でもありました。 アンドロイドは、、、というと、あんまりどうでも良かったような、、、。メッセージ性があるようで、あまりないけれども、さすがに僕らには刺さる映画でした。
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